2010/04/23 21:42:21
こんな仕事をしているので、時々、本当に時々ですが
自宅出産についての考えを聞かせていただいたり、
相談を受けたりします。
かつて私もオランダで自宅出産をしました。
オランダでは助産師とともに出産を迎える人が46%くらい
そのうち自宅出産率が30%くらいです。(2003年ごろまでの統計)
この国の医療体制は日本とは違い、まずはホームドクターにいって相談。
そこで対処しきれない時に専門病院、専門ドクターに紹介されます。
出産も同じで、助産師または産科専門医に紹介されます。
その際の最終決定権は妊婦とその家族。
ですので、両方のリスクを聞いたうえで、選びます。
そして、健診中、何らかのリスクが見出されると、専門病院なりで検査。
その結果、法律上ハイリスク以外は助産師のところで経過をみてもらうことができます。
出産時、リスクが高まれば、すぐに病院なりに搬送。
このリスクについては、かなり細かく決められており、
すべての助産師・医師は熟知し、遵守します。
大丈夫であれば自宅へ戻ることもできるし、そこでお産もできます。
そして搬送時はパトカー先導で行きます。
受け入れを拒否されることはありません。
緊急時に対するベッドは確保されているので。
こういう自宅出産の際の社会システムが整っているのがオランダでしょうか。
(2005年ごろまでの状況です)
それに対して日本で自宅出産する際にはどうでしょう。
社会システムが確立されていない状況ですから、
かなりのリスクを自分自身が覚悟しないといけません。
妊婦さんとそのご家族がお産について勉強し、
正常出産ができるだけの体づくりをする必要があります。
何より、何か起こった時、すぐに対処しづらい状況を選んだ
自分たちにすべて責任があることを自覚する必要があります。
病院でお産するにしても一緒です。
ただ、専門職(医師・助産師)の複数の目で見守られる、
異常な状態になりそうになった時にすぐに専門的に対処される
という点が大きく異なります。
もしも自宅出産を選んだ時
妊娠中から出産時、出産後、よしんば赤ちゃんがなくなるようなこと
妊婦さん本人がなくなるようなことがあったとして
すべてを受け入れる覚悟はありますか?
オランダ人の出産に対する考え方と日本人は現在大きく違う、というのが私の印象です。
オランダでは自然淘汰が起こる、ということを社会が納得している感じ。
流産も必死で抑えようとするよりも、自然の流れをみる、という感じです。
出産ももちろん最善は尽くしますが、それでもなくなることがあったら、
これは仕方がなかった、というようにとらえられている感じがしました。
今の日本はどうでしょう。
出産は無事で当たり前、赤ちゃんは元気に生まれてくるのが当たり前。
もしも途中で何かあったら、それを発見できなかった医療者の責任、
となっていることが多いように思います。
日本も昔は「お産は命がけ」でした。
いつの間に、こんなに考えが甘くなったんだろう、と思います。
自宅出産のもう一つのリスク。
それは、請け手の助産師、提携病院にもあります。
無事に出産が終わるまで、ほとんどの助産師は命をすり減らすように見守ります。
提携病院もかなりの覚悟で受け入れます。
仕事だから当たり前かもしれませんが、
自分の助産師人生、医師人生をかけた見守りになります。
そういったところまで理解した上で選んでいただきたいと
同業者として願っています。
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